のろい

 右膝に痣ができた。いつの間にこんなに大きいのをこしらえたのか、全く記憶にない。手で押さえると少し痛い。紫の濃淡がきれいだ。自傷癖はない。
 気づかないうちの傷は多い。10年前の言葉の意図に今気づくなんてザラだ。あのときああ言い返せていたら水戸黄門よろしく成敗できていたのに。自分に向けられた言葉の意図に10年経ってうだうだ言う、そんなの自分だけだ。今更こぶしを振り上げても遅い。
 そうして諦めて治らない痣がいくつもある。右利きの振り上げたこぶしは右膝にあらわれるのかもしれない。忘れたいことばかりだ。


(20170427)