あるアイドルの告白

 四ツ星学園に入学してからドキドキがとまりません。それはポップコーンみたいに楽しくはじけたり、わたあめみたいにふわふわ甘い口どけだったりして、そのときどきによって正体が変わります。涙の形をしたしょっぱい味がすることもあります。わたしはそのすべてを知りたくて、こうしてステージに立っているのだと思います。

 あこがれの先輩はとても厳しいです。時間厳守、身だしなみはきっちり、どんなお仕事も真剣に。どれも当たり前のことですが、実際にやり続けるのはとても難しいことです。でも、この当たり前なことの積み重ねでキラキラできるのだと思います。まっすぐな先輩はかっこよくて、輝いています。
 先輩のご指導は厳しいだけではありません。お叱りのあとには、よかったところも教えてくれます。この反省会で、アイドルとしての鍛錬が力になっていると感じます。先輩には感謝してもしきれません。
 (これは言っていいのかわかりませんが、先輩は褒められるとすごく照れます。普段のクールな印象とは違って、とてもキュートです。)

 四ツ星学園では友達もできました。友達で、仲間で、ライバルで………大切な存在です。個性も目指しているアイドル像もまるでバラバラですが、あこがれに追いつきたい、追い越したい、輝きたいという気持ちはみんな同じです。気持ちが同じなら、他はバラバラなくらいがおもしろいのかもしれません。ね、みんな。

 アイカツカードは不思議です。ひとりで思い悩むときも、カードを見ると元気や勇気がわいてきます。先輩や友達と話すときも前向きになれますが、カードはまた違う自信をくれます。正しい道へ導いてくれるような、光の向こう側から手を差し伸べてくれているような………不思議な感覚に包まれます。アイカツをしていて自信がないわけではありませんが、それでも拭えない小さな不安はカードが取り払ってくれます。そうして、わたしはやっとステージに立てます。
 なによりもファンのみなさんからの愛情が、わたしの活力になっています。好きだからアイカツをしていますが、続けられるのはファンのみなさんがいるからです。好きなことを続けられるのはとても幸せなことです。わたしはお返しをしたいのです。みなさんから受け取ったパワーを何倍にも返して、笑顔になってもらいたいです。悲しいことやつらいことがあったときは、わたしのステージを見にきてください。きっと笑顔にしてみせます。
 わたしは、実はある人の大ファンです。その人は真摯で、前向きで、いつも明るくアイカツをしています。キラキラするのがお仕事なのはどんなアイドルでも同じなのだなと思います。わたしもアイカツをしているから、キラキラするために途方もない努力が必要なことがわかります。その上での輝きだから、なおさら尊いと思います。わたしももっとがんばります。もっとがんばって、もっとたくさんの人にキラキラを届けたいです。

 最近、二択を迫られることがありました。先にした小さな約束と、後から与えられた大きなステージ、どちらかを選ばなければなりませんでした。わたしはそのとき焦っていました。S4決定戦が近づいていたのです。周りの子たちはS4決定戦へ向けて順調に準備を進めています。でも、わたしは?
 S4になる。それはわたしの夢であり、目標でした。大きなステージを成功させたら、S4決定戦で勝つ可能性がぐんと上がります。そのステージは尊敬する先輩からの頼みごとでもあったので、小さな約束とどちらを選ぶか、とても悩みました。
 わたしは、小さな約束を選びました。今思えば、悩むところではなかったのです。約束したファンがそこにいる、それだけで、わたしにとってステージに立つ理由になります。S4決定戦への強すぎる意気込みが心を曇らせていたと思います。アイドルでありアイドルのファンでもあるわたしだから、できるアイカツがあります。それに気づかせてくれたひとがいます。

 正直言って、あまりいい印象はありません。いつでもクールにしていて、小難しいことを言って、メガネがそんな印象をより強くさせるし、なんだかわたしとキャラがかぶっている気もするし。あの人がいるところにいつもいるし………それは、同じグループだから当然ですけれど。
 だけど、いいところもあるのかなと思います。わたしが悩んでいるときにいつの間にか現れて、それらしい言葉をくれます。振り返ると、その言葉に何度も救われています。大きく揺さぶられることはありませんが、染みるような、だけど大きな一歩をうながしてくれる言葉です。本当は心から優しくて、そっと見守ってくれていることをわたしは知っています。でも、今はまだ気づかない振りをしておこうと思います。S4になったとはいえ、まだまだ脳内データベースの補完は必要そうですから。


(20170427)

アイカツスターズ!から、早乙女あこさんの手記的な感じで